スケート靴を脱ぐまえに

୨୧舞台・スケート・他 備忘録ポエム୨୧

2020年下半期現場おぼえがき

  この奇妙な年でも楽しかったことを書いておこうと思いました。一応恒例にしていきたい感想ブログ、1万8千字ございます。全然年内に書き終わらんかった。

  例によってイベント系、そして今年増えた配信での視聴はひとまず省いています。

 

9月

GEKIIKE本公演第11回 HIT LIST

全労済ホールスペースゼロ/他

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「たとえばあなたと過ごした当たり前の世界の景色がもう見れなくなっても」

  こんな世界になってしまう前、2020年の1月4日にこの劇団さんの10周年記念公演として告知されたのが、もう遠い遠い昔のようです。地方公演があったことにもびっくりしたけど、まずスペゼロってわかって倒れかけた。いや、埋まる!??どうしよう!?出て行った看板俳優呼び戻す!?!?それは絶対むりだから谷さん呼んで月下燦然ノ星後日談やるしかない!!!!ミヤイチシンメを特殊召喚でターンエンド!!!と散々大騒ぎをした1ヶ月とすこし後、メインキャストが公開され、ほんとうに谷さんがダブル主演の片割れとして事務所看板の鷲尾さんに名を連ねてきて大声出しましたね。わたしの青春の色はいっしょう赤と黄色なのかもしれないとすら思った。

  大筋としては、池袋から少し離れたほとんどさいたまくらいの町の商店街が、市の道路工事で立ち退きを命じられ、最後かもしれない商店街の夏祭りに奔走するおはなしでした。

  主人公は、家業の八百屋を継がずに早くから土木の道に進んだ稲国響くん(32)。ひたすら怒涛でハッピーな主旋律に、常に寄り添って、大人が夢を追うこと、未来のことを考えることがベース音のようにひくくひびいていたなあと思います。これを観ていたわたしは、夢を追う方でなく、応援する方、眺める方という立場にあると感じたので、こんな世界になってもまだ好きな人たちを応援していていいんだと許されたような気がして嬉しかったな。

  冒頭の引用は、後半がひたすら商店街のみなさんのライブパートと化すんですが、その最後の曲の歌詞です。「それなら新しい景色を見にゆこう」「あなたと離れなきゃいけなくなって手を握ることが難しくなっても」と続くの、作詞が脚本の木村純子さんなんですけど、作中のキャラクターのエピとちゃんとリンクしてるから無駄に泣かせにきてるわけでなく、でもこうなってしまった世界を否応なしに思い起こされて、天才のバランス感覚〜!!!

  Cメロで「どんなに遠く離れていても かならず 逢いにいくよ」と響くんのソロがあるんですが、愛する歳の離れた弟はアイドルに、親友がゆくゆくは宮大工になり、生まれ育った商店街も近い将来たたまれる稲国響くんであり、大阪福岡という地方公演をかなえた鷲尾くんでもある人の心の叫びすぎて毎日グッときてた。

  大好きなコンビが、お互いを思いやって、信頼して、くしゃくしゃに笑って、げらげら日替わりやアドリブを楽しんでて、一番かっこいい花形グループでばちばちにキマったツートップ張ってて。ずっとずっと夢みたいでした。福岡から帰ったら東京はすっかり涼しくなってて、この公演が終わるまでが夏だったのかななんて思えて。ふりかえるとときめきばかりが落ちていて、シンメ厨ゾンビとして余生までまっとうさせていただいたぐらいの夏でした。

 

ミュージカル VIOLET

東京芸術劇場 プレイハウス

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   わたしの数少ない友人である横田龍儀さん厨から誘ってもらって入りました。春の公演が中止になり、多少のキャスト変更はありつつも無事催行叶ってよかった。4日間と限られたスケジュールの公演、あのころはまだ舞台の再開もわずかで、わたしが行った回も満席でした。

  春、というか初夏、自粛真っ只中の成河さんのこのご発言で、VIOLET中止になったの悲しいなってあらためて残念だったから、大阪行き直前に駆け込めて本当によかったです。

  芸術劇場のプレイハウスはもちろんはじめて。めちゃくちゃ音響が良かったのと、思っていたより傾斜があって、椅子が良くて、終始感動していました。あと無料のプログラムがすごい。小劇場と紙質も情報量も雲泥の差、いや動く資本がまったくちがうんですね。ただしくまさしく、財力。チケット代がしっかり(オブラート)(昨今の2.5の高いやつよりは安い)してるぶん、還元率が高くて満足度がすさまじい。

  優河さんの回でしたが、歌というものは感情表現につかうにもっともふさわしい手段だ、と自然に思わされるくらいには、その喉から放たれるパワーが凄まじくて。歌手のかたで、舞台は初挑戦でいらしたんですね。演技も素晴らしかったから全く気づかなかった。信仰心のうつくしさも強靭さも危うさも救いも狂乱も、すべてどこかに明日のわたしがいるような気がして、うすらさむくなってしまうほど。

  さきにあげたツイートのご発言の成河さんのモンティも、弱くてずるさもあって、それでも薫る可愛げみたいなところが人間的な魅力なのかな、と柔らかくも圧倒される巧さのお歌を聴きながら思っていました。ていうかこの人うますぎてむしろ歌っている感じがしないんですよね。歌!!っていうんじゃなく、自然体で語る言葉がメロディーを伴ってるの。

  それから地味に楽しみにして行ったSpiさんの「父親」。2.5ではわかりませんが、ストレートやこういったミュージカルで見ると相変わらずの降霊型で、Spiさん自身がそもそもそういう人格を持つのでキャスティングされました、と言われれば信じてしまいそうなところが変わってなくて、最高でした。パパの、さいごの曲、すごく良くて泣いてしまった。持ち前の体格のよさで、ふわりと子役ちゃんを抱き上げるんだけど、ずっと悩み苦しみ生きていて。いちばん正しいやり方は見つけ出せなかった人かもしれないけど、まちがいなく、妻と娘を愛していた人だと思えてよかったです。愛するということ、守るということ、トライアンドエラーを繰り返せないから、むずかしかったんだろうな。

  兼役がおおくて、くるくると表情を変えながら、たくさん着替えていた横田くん。ずっと持ち前の綺麗な、洋画の子役みたいなお顔のままで、メガネかけたりしないしあまりビジュアルが変わらないのに、やはりすべてが別の人で、いやあたりまえっちゃあたりまえだけど。あんまり喋らなくても、ずっと舞台の上にはいてくれて、その場の空気に必要な人物で、決して「いなくてもいいアンサンブル」ではないのが、ああいいなって思えたところ。こんなの推しがやってたら嬉しくて泣いちゃうだろうな。なかでも、ほぼ喋らないけど、運転手さんの雰囲気がすきでした。

  個人的には島田歌穂さんにいちばん心を射抜かれました。とても素敵で。佇まいからうつくしい方。調べたらものすごいひとでした。

  終始一貫して美しくパワフルな旋律に、でもどうしたって人間は真の意味では分かり合えはしないのだという諦念をおぼえた2時間でした。うまく言えないんだけど、顔に大きなコンプレックスを持ち、ムラ社会で迫害されても、フリックへの酷い言葉に気づけないんだなって、結構あの辺がしんどかったな。

   観終わってからしばらくして、モンティ、白洲迅くんが演じる予定だったんだと思い出してえもくなっていたのは内緒です。お菓子を両手いっぱい下げてくるじんくん、「そいつが優しくしてくれてたらよかったなと思って」と言うじんくん、さすがにちょっと観たかった。

 

 

10月

ホチキス第42回公演 銭に向け叫ぶ 2020

東京芸術劇場 シアターイース

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  北村諒さんの顔面を信じろ。

  観るたびに動くと美術品みたいだなとびっくりする北村諒さん、演技もアドリブも文句つけるところとか気になるところがないのが好きなんですよね。あの顔ならどんなジャンル行っても無双できそうなのに俳優として板の上でちゃんとしてるところ。

  少年社中さんとの期間限定共同企画(2007)の再演ということで、やっぱり再演されるだけあるおもしろさでした。小〜中劇場でたまに出会えるタイプの、いくつかのばらばらのストーリーが最終盤に重なり合って一つの絵になる構成がよかった。演出も凝ったことしてるわけじゃなくても飽きさせないし、観やすかったです。

  キャストの皆さんも、テンポに敏感な人ばかりでよかった。こればっかりは個々人の場数とセンスだと思います。脚本が2007だから完全に古いなってところも多くて、それをカバーするのが演出でなく俳優陣のセンスってところはいいのか悪いのか、とは感じたけど。

  招待してくれたおたくの推しこと校條くん、お顔立ちがしっかりめに派手なんだけど、値踏み次郎という独特のキャラクターにレトロめな風貌があっていて、噛まないし、アドリブにも割と強くて、でも破天荒とかでなく、舞台上でおきることに穏やかで、自由自在に動けて、きちんと大人で。往年の(往年の……?)バブさが全然なくて、どこか寂しかったけど、頼もしくて眩しかったな。事務所を変えておたくの皆さんからするといろいろあったとは思うけど、とにかく仕事の役の幅がどんどん広がっていっているのが良かったところなんじゃないかななんて思いました。

  キャラクターで言うと、北村諒さん演じる大吉は、場末のアナログアイドルなんですけど、ずっと顔が綺麗で本人もそれを自覚しているタイプのクズで、しかも過剰接触で稼ぐ気もない、活動場所が健康ランドで小さいライブハウスじゃないだけのやる気ないメン地下すぎて味わい深かったです。

  ただ、ひとつ言うなら、大筋の絡み合いもいいしテンポもいいし楽しかったし笑ったけど、初出が2007だからなのか演劇という社会の閉塞性からなのかまーーーーーひっかかるところが多過ぎる。

  大吉工芸品通販はそもそもが詐欺だし、結果暴力自体はふるっておらず濡れ衣となるDV疑惑も言うて酔っ払って怒鳴りつけてる時点で倫理観のなさが窺われ過ぎるし。いい仕事ぶりのマネージャーもべつに仕事じゃないところで評価されてるしクッソおもしろいけど派遣キャットファイトは実際有ったら大問題だし。おじさんの文化圏の常識、もう通用しないんすよ、ってなっちゃって。そこの胸糞感がなければでもこんなにも心に引っかかってないとは思うので、そういうのが狙ってやってることなら正解かもしれないけど。

  そういえば、箱がわりと段差が急だったので後方も見やすそうだったのも心に残ってる。東のシアターグリーン、西のシアターイースト(紛らわしい)。

 

アルジャーノンに花束を 2020

博品館劇場

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  矢田悠祐さんはいつだって最高。

  A7DD(青七だれでもだいすき)なので機会さえあれば絶対に行こうと決めてたアルジャーノン再演、結局SUI先行で前方センブロサイド後方ドセン……といろんなところから観られ、大変満足しました。

  6年くらい前から矢田さんのことはバイクで駆けつけていざとなったらバイクを素手で投げるくらいのパワー型白馬の王子様とか言うてたんですが、アルジャーノン、チャーリィとしての矢田さんがふとしたときあまりにも絵画の天使のような空気感を纏っていて、これが役者だよなあ、なんてしみじみしてしまって。白衣装にくるくるの巻毛にあのお顔立ちに無邪気さと憂いのある表情、本当にそろそろサイゼに飾られてる気がする。

  32歳の発達障がいの男性にしてはビジュアルが良すぎて天使性というか善性が際立ちすぎて眩しかったな。でもそれにしたって、脚本が原作にある知能を得たチャーリィが性格の悪さを露呈するところをほぼ全てカットしてるから、ただただその頭脳の明晰さに周りがついていけてないだけに見えたのはすこしもどかしかったかも。大勢の前で恥をかかせてやろう、とかあのあたり。

  少人数で全てを回す俳優陣も、耳に残る旋律も、演出も、とてもよかったけど、どうしたってわたしは「この脚本は果たして原作に真摯であったか?」を最初に考えてしまうきらいがあります。

  というのもものすごーーーく引っかかったところがあったからなんですけど。

「大抵の男は、あたしを好くか好かないかのどっちか、あたしには、どっちだかすぐわかる。でもあんたは、あたしを怖がってるみたい。同性愛じゃないわよね?」−『新訳 アルジャーノンに花束を』p285

ここが「まさかホモじゃないわよね?」にわざわざ改変されていたことは、まあ脚本家の持っている本がそういう表記だったのかもしれない、で目を瞑ろう。問題はこのあとにある。

「もしそうなら、隠さなくてもいいわよ。だってそうならあたしたち、ただのお友だちになれるもん。」−同上 p285

  この台詞が丸々カットされているのって、本筋に関係ないからなのかな。じゃあ「まさかホモじゃ〜」も絶対いらないんですよ。フェイのような素敵な女の子が、男としてでなく人間として手術を受けた白痴の天才としてではなくなんだか面白いやつとして、チャーリィを好ましく思う、というところが重要だと思うんですね。同性愛のくだりをやるなら、性愛以外の感情からも好ましさを抱くこの流れは絶対に必要じゃないの?フェイへの認識が微妙に歪むのが嫌だしそもそも付け足されてた「まさか」も嫌。ダニエル・キイスはあの時代にあってもマイノリティや発達障害へのこまやかな眼差しを持つのに、そして訳者と出版側もその眼差しに真摯に向き合っているのに、令和に来てまで踏みにじるのはどうかと思った。

  脚本の真摯さというとりとめのなさすぎる話題を続けてしまいますが、ウォレンの養護施設(障害者収容施設)にいだく印象が舞台上ではずっとマイナスなのが気になりすぎました。視察まで行って、彼には情緒面で得るものがあったはずなんですよ。時間的に厳し過ぎるけど、でもあの心の動きは、脳の劣化した未来にも無償の愛がある可能性や、福祉というもののなんたるかをチャーリィに考えさせているはずで、ただただ無能になって泥のようなぬるま湯に揺蕩うことを怯え続ける必要はなかったんじゃないかなって思ってしまった。

  本当にいい舞台だったんですよ。初日でも千秋楽でもない公演で、トリプルカーテンコールにスタオベまでついてきて、眩しそうな顔をする俳優の皆さんが本当にこころに残り続けてて。だからこそ細かいところがめちゃくちゃ気になってしまうんだと思うんですけど。

  曲で言うと、テーマ曲はもちろんのこと、「さよなら ドナーズベーカリー」と「おかえり 鉄の檻へ」がおなじメロディーなのが、美しくも苦しくて大好きでした。『かしこくなりたい』、おなじ曲を知能レベルによってその都度歌い方が変わるチャーリィが何度も歌うのがたまらなくよかった。矢田さん、「歌がうまくて器用な俳優」から、本当にどんどん「歌で表現できないことがない俳優」になって行く様を見せつけてくださって圧巻。

  みなさんで歌っていた曲、たくさんあったけど、そのどれもがこの人数だけで出しているハーモニーとは思えないくらい重厚で。観たどの公演も良かった。

  観続けることの意味としては、公演期間が進むにつれてやっぱり出番もスケジュールもシビアだったから矢田さんの喉の調子や歌い方が変わっていくんですよね。いい悪いでなく、そのうつろい、凄絶な美しさを拝見していけたこと。ご本人も後日、喉のためになるべく楽屋でも誰とも話さないようにしていたとおっしゃっていたけど、本当に心身ともに追い込んだ状態だったんだろうなと思います。それだけに、劇中最後の方で、後退する知能と向き合いながら研究と記録に没頭していく鬼気迫る様が「美しく見えた」と言及されることに恐ろしいほどの親和性が生まれていて。ゾッとするきれいさと儚さと怨念じみた意志のつよさ。賢くなったこの一瞬を生きた意味を模索する痛々しさ。

  常に無邪気だったりいじらしい思春期の様子を見せてくる第1幕とは打って変わって、第2幕冒頭の、フェイとの限られた日々だけは、ヒステリックな苛立ちもなく、誰も自分のことを知らない社会で生きるひとりの男で、ぐっとくるかっこよさがありました。あえてだと思うけど、研究所やパン屋では立ち位置やヒールや矢田さんの姿勢なんかで全員チャーリィより背が高く見えるようになってるんですよね。それが、2幕ではフェイはチャーリィより常に小柄であるようになってて。大人の男性としてのチャーリィが客観的に捉えられた気がしてよかったしシンプルにスーツに耳掛けの髪型が良すぎて沸いてた、かっけー。

  2幕といえば「ダンスを踊って わたしと踊って それだけなの お願いは」っていう何度か歌われるナンバーがだんだん切なくなっていって好きだったんですが、最後の方で大変嫌そうにかつ大変エレガントに、気乗りのしないエスコートでダンスを始めようとするところ、いつ観てもカッコよくて内心大騒ぎでした。「フェイ(低音)」を頑なに流行らそうとするダチをセットで思い出しちゃうけど。

  この舞台、わりと終始重く考えさせられる内容なので、唯一と言っていい笑えるパートが和田さん演じる一瞬出てくるクラブの男の掛け声(謎に日替わり)なのじわった。笑っていいのか分からなさ過ぎるのよ。男性のメンツがみんなわりとボケたがりなのもあってか、公式ツイッターにあがる楽屋写真がいつもバカ楽しそうでそれも救いでした。

  個人的に、発達障がいが身近にあったことで、これはこんなに美しい物語として閉じていいのかと思ってしまったからか、ついにいちども泣けなかったのが自己嫌悪であり心残り。

 

11月

ALIVE STAGE ep.3 School Revolution

ヒューリックホール東京

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  何度だって一小節を抱きしめるから。

  チケ発までしたのに白紙になった春の公演が、季節を大幅に跨いで実現したことをまずは喜びました。通うってほどじゃなくなってしまったけど、2017年に追いかけていた3月の青春の日々を、かすかに風の香りに感じながら、おなじテーマソングを聴くことができて、感無量だったな。使われてるインストの劇伴もいちいち三年前と一緒でえもくて仕方ありませんでした。なんか、こう、もう全然知ってる先生はいないのに母校に帰ってみてグラウンドとかの眺めに感じるような寂しさと嬉しさがあって。

  幽霊のゆるふわ設定や弱いオチ、アンサンブルと日替わりに頼り切る構成、正直実家のような安心感。原作のキャラクター力と原作おたくのとりあえずちゃんと観て楽しんでくれる姿勢によって成り立っていてやばくはあるんですけど。

  スタンディングもコールも歓声も禁止されてなおライブパートはちゃんと楽しいのって、役者ひとりひとりが、ハードなダンスと楽器の稽古を通して、舞台パートのおまけでなく、しっかりエンタメとしてライブを行おうとしてるからだろうな。あいかわらず生演奏という唯一無二のつよみのSOARAさん、あきらかにep2より演奏に余裕あって良かった。

  舞台に話を戻すと、八面六臂のご活躍の名前付きオリジナルキャストの皆さんが良かった。物語の主軸から日替わりまで、若くてかわいいだけじゃなく下地がきちんとしていたのが好感持てました。ビジュアルが良くて勝手に注目していた浅田先生と、もう一人ありえん顔の小さい子がいて、なんか見たことある!だれだっけ!!!!とおもっていたらわりと毎週げらげら見ていたうつけ坂46(戦国炒飯TV)の子だった。見ていて不安になるほどの頭身、ほぼ島田高志郎さんの趣。クラスメイト役ふたりも、幽霊くんも、台詞量が多くてもだれがどう台詞飛ばしても、あのけっこう複雑な二つの章をまいにちこなせてて偉かった。

  わいわいがちゃがちゃ賑やかながら、生き方とか、人生の目標とか、心残りとか、そういう心の「生き方ってどうしよう」にも触れていく感じがあって。桜庭涼太くん(演:三谷怜央さん)、ノーマークだったんだけど、あのキッツイ性格で「今がつまらなくても、どうしようもなくても、それは生まれや周囲の他人のせいじゃなくて自分のせい」「もう大人だ、……子供じゃない」って言い切るのがすごくよかったです。桜庭くん自身が、過去やおうちにいろんなものを抱えた人だというのがわかる脚本なだけに、心にざくりと刺さる感じがありました。

  幽霊が見える人、見えない人、声だけ聞こえる人の演じ分けもよかったな。浅田先生、そういう意味でたくさんのやることがあって、全然知らない若い俳優さんだったけど、みていても楽しかった。

  日替わりゲームと日替わりネタと日替わり漫才と……ってとにかく毎回違うこと面白いことが求められてて、たくさん観に行ってる人も一度しか観にいけない人も配信で見た人もそれぞれの楽しみ方ができただろうなっていうのはシンプルに強みですよね。これは観た人にしかわからない話題ですが、たっちっちゲーム(指スマを参加者の体を使ってやるようなゲーム)も略語ゲーム(アルファベット版あいうえお作文大喜利も、リハで一回やれば本番に流用できるレベルでみんなそれぞれにある程度のルール把握能力があるのが手放しですごいなって。8幕までしか知らないけど、定期的に全く話を聞いていない人が出現していたツキステでやったら大惨事だったと思うので。気遣いもできて器用な子が揃ってる。かなりそこは塩澤さんと真修くんがしめてる感じもあっていい。シンメ厨としては、けっこうな佳境で、たっちっちの2!で一緒に立ち上がって、在原くん(演:石渡真修くん)をクリアにしていた神楽坂くん(演:吉田知央くん)のモリ宗シンメがめちゃくちゃよかった。

  キャストの皆さん、延期だったこともあり、思うところのたくさんあった公演だったみたいで、満くんを演じた理輝くんが最後のご挨拶でぽろぽろ泣き出しちゃってたのがめちゃくちゃ心にきてしまって。しかも、それが相方の五十嵐くんによる「……舞台演劇は、総合芸術です。(中略)観にきてくださるお客様が入って初めて完成するものです」という、とてもとてもいいご挨拶からだったのがさらに刺さった。ので彼らがやっと主演になる2月末の舞台が無事上演できますように。

 

Hands Up! 2020

Theater1010

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  言いたいこととしては、配信の話どこいったの???????ってだけです。有料でいいからやってほしかったな……サイレントで消えていったから告知してた演者すら戸惑っていた。

 

12月

舞台 SARVAMP

全労済ホール スペース・ゼロ

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  褒めてる人が多くて期待して入ってしまったからか結構肩透かしでした。暗転が多すぎる。まあこれはわたしが気にしすぎるきらいもあるのでなんとも判定しづらいですが。多分前世で暗転してる間に親を殺されたんだろうな。  

  メタネタが多すぎる。メタネタ、好きなんですよ。弱い自覚もある。でもだからこそ、公演期間進んできて役者が演出家に許可もらったりしながら追加されるメタネタは面白いけど、脚本としてもとから組み込まれているにしては多すぎるし「こういうのが面白いんでしょ?」感が鼻につく。

  周りに原作厨がいなかったので原作勢の反応がわからないのですが、キービジュアルが2014年くらいのウィッグ感で泡吹いて倒れそうになった。動くとまだマシだったけど、全体的に竹中くんの顔面に頼りすぎている。

  うまいことエピソードを絞って凝縮してまとめていたのは評価できるところ。でも、俺たちの冒険はまだまだ続くぜ!みたいな終わり方が個人的にきらいなのでしっかり1作品として成り立たせろやとは思った。総合してチケット代高いな!と思ってしまったので向いていなかったようです。原作が入り組んでて面白いんだろうな、というのは窺い知れました。褒めてる人多かった印象だけど、原作と役者のアドリブの功績以外で面白い点が見出せなかった。すみません。

  役者のみなさんがコロナ禍にあっても毎日明るく日替わりを増やし続けてたのは良かったと思う。寿司屋の後ろの銅像のところとか。ここにもいる鷲尾くん、大変イキイキしていた。サヴァミュの回わりとずっと笑わせてもらいました。輝山くんの民衆の歌を聴く日がくるとは……と謎にウケつつ、竹中くん、おそらくレミゼを知らないんだな、というところまでじわじわきました。

  なんだか確執がありそうだけど特に何も触れず終わった御国兄弟、カーテンコール後の捌けで、すれ違いざまにお兄ちゃん役堀田くんが「アバヨ」って悪い笑顔で口パクするんですよね。ああいう細かいことが得意な人が推しキャラを演じるのちょう羨ましい。

 

 

ホテルアヴニール

Theater Mixa

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  そんなとこに劇場あった!?って思ったらサンシャイン通りに面したゲーセンの上の映画館の居抜きとしか言いようがない箱で、やや面白かったです。日によって、暗転とか静かなシーンで、下のフロアのライブか何かの音がずっと聞こえてたのじわじわきた。今は亡きアイアのバイクの走行音とか選挙カーを思い出しました。そんなノスタルジーはいらん。今回はホテルって設定で、隣の部屋がうるさいとクレームを入れる描写なんかもあったので、通ってる人たちも、もうそういうものとして割り切ってたんだと思うけど。他の舞台をここでやるなら考えたほうがいいでしょうね。

  ふたりずつ4組、いち公演8人のオムニバス。微妙につながっているけど、すれ違うようにそれぞれの人生を生きる全員が、抱える問題はそのままに、それでも今日のご飯や明日の天気を考えていくさまが軽やか。

  稽古がほぼ全リモートだったからか、各話オチが弱いのと、テンポがめちゃくちゃ気になる話があって、そこだけ感想に困りました。

  メンズキャストが全員舞台ダイヤのAを共通点にしていて、同窓会みたいになってたのと、愛する二遊間が親友役の組み合わせがあったのもぐっときました。椎名葉山の並び、ずるいんだよ。葉山昴くん、いじられつつも器用にベテラン感があってかわいい印象のある俳優さん。小西成弥くんも深澤大河くんも久々に拝見したけど、月日を空けて観て、上手くなってる!って思える新鮮さと喜びは、やっぱり大事に覚えておきたくなりますね。もちろん舞台の素直な楽しみ方じゃないかもしれないけれど。お二方とも、後輩役が似合いすぎてて他の追随を許さないつよみがあってよかった。

  上田悠介くん、どの回もわりかし好き勝手に(笑)めっちゃ楽しんでて、アドリブも何もかもずっと笑顔にさせてもらえて。巧いし楽しそうだしお芝居が好きなんだな、という感じは完全に来世推したい枠。高橋良輔さん、純さんのときも思ったけど実身長より大きく見える方。巧いんだよね。思わず元々神経質な人かと思っちゃう。ワガママ言うなら、ここふたりの組み合わせも見てみたかったな。

  高橋さんの自由すぎる奥さん役・植 万由香さん、お顔が上品で毎日ヘアメが全然違って表情がくるくる変わってて、ともすればだいぶうっとおしい役だけど可愛かったのは完全に人柄というかパーソナリティの勝利。掛け合いも聞き取りやすい無敵のお声と滑舌、アナウンサーの方なんですね。

  女子キャストといえば、藤松祥子さんがとにかくよかった。佇まいも言動も舞台向きで独特なんだけど、その独特さに"素"感がある。動作が大きくて、何言ってんのかわかんないときもあって、声も大きくて、手足が長くて全体にひょろひょろっと細くて、なにか一芸に秀でてて、黒髪ボブのよく似合う女の子。いるよな。いる。今回の場合の一芸は、歌がうまくて、作詞にパワーがあるボーカリスト。演技がとにかく良くて発声もよくて、ああこういう女が夢を一緒に追いかけてくれた矢先にしれっとつるっと結婚しちゃうんだよなわかる、って感じでした。本人はずるいつもりで生きてなくて、計算とは無縁なのに、こちら側からすると文句も言えなくてずるいような女の子。観終わってからしばらくは仕事中も彼女の歌う曲が頭の中に流れてた。冒頭しかわからないけど。♩36.5℃〜♩私にとっては微熱っさ〜〜触って触って触ってみ〜ておで〜こ〜〜〜♩♩

  複数回観られたのでいろんな組み合わせを比較できたのもよかったな。招待してくれたのは校條くんを応援しているお友達でしたが、そのお友達とも、優勝はみんな大好き椎名鯛造さんで異論ないねとなりました。親友の主催劇団立ち上げ公演を観に東京に来たぶどう農家の見習いの男の子が、実はすっごく演出や演技に向いていた、という話があるんですけど。途中で、親友の演じてたギャングのボスの演技解釈はこっちの方がいいんじゃない?ってホテルで実演しちゃうやつ。ものすごくて。ちょうかっこよかった。相変わらずのチェシャ猫みたいな笑顔に、背筋凍る寒さのような怖さがあった。だれも勝てん。あの話、二遊間もよかったけど、椎名校條組がバク転とバク宙の応酬になってたのも、完全にただの特技披露だったけど楽しくてにこにこしました。また明治座でお二人とも観たいな。

  校條くん、今年謎なほど頻繁に拝見したのに、みるたびに良くなる人で、いつもとってもおともだちがうらやましくて。お顔も綺麗だけど、笑顔も飾らない性格も可愛いけど、何より役者として応援していて幸せに思えそうでいいな。なお今年の好きなエピソードは「FC(ファンクラブの略)」や「ノベルティー」(「お茶ですか?」)などの単語をまじで理解していなかったくだりです。

  そういえば座席数制限の緩和直後で、久々に隣同士がいる状況だったので、久々に劇中で喋り合う関係者という地獄も体感しました。普通喋らんだろ。なぜ関係者に限ってそうなってしまうのかが永遠の謎。

 

Good Evening School

本多劇場

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  グッドイブニングスクールちょー楽しい!と叫びながらマチソワしました。すっごいよかった!!!!!いろいろと自現場の中止が重なり、内心かなり傷心だったところを癒していただいたこちらが今年の現場納めとなりました。面白かったので実費払った枠。

  いやもう脚本の原田優一さんプロデューサー兼用務員さん役の鯨井康介さんへの信頼度がドカンとばく上がりしました。脚本のストーリーとしては全然目新しくなく、展開が進むほど陳腐ですらある気がしてくるのに、細部の驚くほどのリアリティと、それでいて倫理観を丁寧にすくう濃やかさ。いや、本当にすごいと思った。次のジェムクラブ、鯨井さんも出してほしい。そしてマーベラス、ほんとにやるときゃやるんだよね。

  有名進学校定時制クラスに赴任した主人公、若林先生(演:横田龍儀さん)がとにかく地味にずっとやばい。自分が我慢をしている、ということを美徳と思っていて、それが誰にも評価してもらえないと爆発するの、あまりにもやばくて、でも絶対にいる人間で、ともすれば明日の自分で、めちゃくちゃ怖かったです。横田厨ダチ、顔にすぐ絆されるから翌日速攻「え?やっぱりやばくないよ!かわいい!」とかいうててわたしはあんたも怖いよ。

  やばいところが細かいだけじゃなく、いいところも細かくて、これほんとに、筆舌尽くしがたいってこんな感情なんだな……早朝まで鍵垢でツイートし続けてしまうほど。

  若林先生が、個性豊かな年上の生徒たちと時間を共にし、進学クラスの担任であり職員室のアイドルことななちゃん先生(演:黒沢ともよさん)に恋をする。それを察した生徒たちが、若林先生へのななちゃん先生からの評価をあげようと、定期考査のクラス平均点向上のため、勉強をがんばろうと決意する。メインストーリーとしては、たったこれだけ。

  まず、時間経過の演出が良かった。春、爛漫のひざしがピンクの照明として降り注ぎ、後ろでは一本の桜の木が満開になっているなかで、横田くんの「春!」という独白から始まる。春が似合う人ですよほんとに。その後ろの木が、劇中にさし変わって、いつのまにかいっぱいの葉を茂らせてる。木に注目するような演技も照明もなく、ただ静かに季節が移ろうのがわかったのがよすぎた。それから、冒頭にとにかく人生経験が足りなくてクラスに馴染めず信用もされない若林先生の描写があるんですけど、そこ自体は軽快なテンポで通り過ぎていくんです。あのテンポ感、最強だった。仲良くなって終わり!めでたし!じゃないことがすぐにわかるの。そんで極めつけは起承転結の承あたりで「先生が来たばっかりの頃、ひどいこと言って悪かったな。」という台詞があること!何ヶ月経ったとか、今はいつとか言わなくてもこれだけで時間の経過がわかるんですよ。すごくない?後ろに「── その夜 ──」とか映してる場合じゃないんだよ。序盤のこの台詞を聞いた時点で、アッこれ面白い舞台だな、って思えた。

  若林先生の人物像の解像度がド高いのも良かった。先に述べたように、まあ現代のやべーやつではあるんですけど。

  まず、生徒というものを「未成年の若き青葉」という装置としてくくって、一人の人間として見ようとしていない(これは「いじめの問題に悩みたかった」という発言からもうかがえてこわい)。そもそも冒頭で「夢だった高校教師になったけどなんと生徒が全員年上だったのです!」と言ってて、生徒というものは年下でなければならないとしている。だから、自分のイメージ通りに動かない夜間学級の年上の生徒たちが嫌だし、20歳までを頑張ってこなかった奴らとしてくくり、見下しているんですよね。そして驚くべきことにこれは最終盤までべつに改善とかされない。おそらく、若林先生がそういう人だからだ。一生その自分の中のエゴにきづかなさそうだし、そういうところが現代のいわゆる「学校から出たことのない人」(=先生像)に通じるのかな、と思わされました。

  子持ちのコワモテ植木屋さんの息子トークの後にひとりごちる「生意気ですね」も、みんなでテストの平均点あげよう!直後の「僕の苦労が、我慢が身を結んだのか」も全て怖いんですよねなんなんだよ。根本的に他人は自分のわからないことをおのおの考えて生きている、という大前提に思い至ってない気がして。

  我慢をキーワードにし、生徒からの取り留めのない質問にちゃんと答える姿勢を見せるけど(これはおそらく我慢の一環)、わりと空気を読まないというか視野が狭い。実例を挙げると、赤ペンでテストの丸付けをしている同僚のななちゃん先生に一生話しかけ続け、鳴った電話も取ろうとしない。ずっと自分が大変だというトークをしている。視野の狭さで言うと、中卒の植木屋さんがずっとヤクザに見えるようにミスリードされて、花壇に植える種の取引を麻薬売買だと思い込んじゃうシーンとかもそう。「人を見た目で判断すると痛い目みるぜ」、こちら側もじぶんの視野狭窄さにハッとさせられるんだけど、植木屋さん、一切怒らないんだよね。対して若林先生はブチ切れるわけですが。あれ怒っていいのどっちかというと植木屋さんでしょ。

  全体的に、お茶目でキュートで歌がばくれつうまいパチンカスふくちゃんと、本当の自分になりたくてとだけ明かされる女装女子ミキちゃんに対して、年齢や見た目をいじるセリフも、彼氏は?とか結婚は?とかいうハラスメントもないのがほんっとうに鮮やか。ここに独白で「いい歳したおじさんとおばさんがいちゃいちゃしています!」とか、他の人との絡みで「付き合ってるんですかあ〜??」とか言うのが、若林先生(すぐさま「セクハラ〜〜〜〜」と切り返される)。夜間学級の皆さんは生活があって、メインフィールドが学校のそとにあるから令和に生きてるんだけど、若林先生のモラルだけが、人生でずっと学校にいるから令和にアプデできてないんですよ。深読みしすぎかもだけど、痺れました。

  ほんとうにこんなにも手放しで《令和感》が褒められる舞台、これからもそうないと思う。すごいんですよ。こんなにストレスないことありますか。素晴らしすぎた。 結婚や子どもが幸せという植木屋さんもいて、でも今仕事を頑張っていて結婚なんて全然考えてないななちゃん先生もいて、どんな服を着てもどんなメイクをしててもよくて。

  数少ない疑問点としては「あぜ道があるほどの田舎に果たしてアパートは存在するか?」ということと、異様なほど排除された母親という存在。これの理由だけは全然分からなくて、もう少し考えたいなと思いました。ちなみにやる気元気いわきは井脇ノブ子さんでしょうね。

  最終的にななちゃん先生に対して暴発する感情も、依然として下地にあるうすら寒さもそのままに、しかし若林先生というひとが憎むべき存在ではないのも面白いところで、そしてこれが観劇後に不快感を残さない要素なのだと感じました。「♩最後は皮膚科」も、パチンカスを構成させるんじゃなくまずは学校の時間だけここに来てもらうようにしているところ、無知を嗤うことはないところ。やべーけど、生徒たちが信頼して好きになってるその理由の一端はそこかしこに垣間見えるんですよね。横田くんの真摯さと重なり合ってて、キャスティングの理由自体は本当によくわかります。

  脚本家に役もついてて舞台に出ている場合の、自キャラへのかっこいいセリフ謎の見せ場つまんない笑いなどが心底苦手なんですが、今回それが全くなくて。脚本の小柳心さん演じるオカジマ、えっと、彼、まじでなに?????終始面白くて笑わされっぱなしなんだけど本当に未来人なのか思い込んでるだけなのかなんなのかよくわかんなくて、でも倫理観とかちゃんとしてて、ミカエルのくだりマチソワしてるからわかってても笑ってしまう、なんなのほんとに。別の世界線で流行ってる一発ギャグが回替わりというこまやかさ。

  彼へのツッコミを一身に背負う山田おじいちゃん(演:コング桑田さん)のそのツッコミの優しさもよくて。このくらいの歳のかたで、笑いをとったりしようとしてしつこく滑ったり価値観的にどうなの?って発言したり主演いじったりする俳優さん絶対いっぱいいるんですけど、アドリブも面白いし歌もちょううまくて全然でしゃばらず温度感もちょうどよくて。すごすぎる。おじいちゃんが生命保険を探してる冒頭「あんた当分死なないだろ!」への「人間いつ死ぬかわからん」、終盤で奥さんを亡くしてる話と繋がるの。そこまでずっと流行りのJKワードばっかり使うおちゃらけおじいちゃんでずるい。おけ丸水産よいちょまるはもうJK飽きてんじゃないかな大丈夫かな。オカジマへのツッコミ全部好きだったけど「未来は今からでも変えられるのですから!」にたいする「ありがとうね」が一番好きでした。ハレルヤ!

  ここまで書いてこなかったけどこの舞台、あまりにも突発で決まってたのに、圧倒的ミュージカルで超楽しかったです。ミキちゃんを演じてたオレノグラフィティさんが全曲新規書き下ろしなさったときいて化け物かと思った。ちょういい曲ばかりだし、あとすぐパロってくるんですよ。レミゼパロナウシカもののけぶち込んだパロハイスクールミュージカルパロも(「ギリギリです!!!」ウケたな)面白かったけど、一番は、ラグビーW杯で一躍有名になったニュージーランドマオリ族の民族舞踊ハカのパロと思われる『WAKA』が急にはじまったやつ。しぬかとおもった。WA!KA!じゃねえよ。

  あとパジャパのくだりが回替わりだったのも好きすぎました。ヤギとネコどっちなんだよ。

  みなさん本当に歌がうまかったけど特筆すべきはふくちゃん役・谷口ゆうなさんと植木屋さんパパこと源さん役・中井智彦さんかな。ゆうなさん、VIOLETでも異彩を放つほどのパワーと突き抜けるお声で素晴らしかったけど、今回も女声が一人しかいない編成とかでもくっきり聞こえすぎてびっくりした。チャーミングで面白くてうまくて言うことなさすぎました。セリフと歌が無理なく同居して聞き取りやすくて。なのにパチンカスとしてやばい面白さをずっともってて目が離せなかった。マイライフisパチンコ〜〜〜🎶はそんなビブラート効かせて響かせていい歌詞ではない。

  中井さん、調べたら四季にいた方でちょう納得してしまいました。パパにずっと心射抜かれてて帰ってからも大騒ぎした。「大人になるまで 一緒に走ろう その靴はパパと一緒に選んだ靴だ」というフレーズが印象的すぎたソロ持ち曲、お腹を痛めて産んだママに対してパパはなにができるだろう?って内容で。歌のうまさってほんとに絶対説得力に比例するんですよ。かっこよかったな。「大人になったら自分の足で駆け抜けて」「君の見た世界をパパに教えておくれ」静かに語り聞かせるように終わる愛情深い歌声、ずっと泣きそうになりながら聴いてた。メロディーがすとんと胸にささって抜けなくて忘れないでいられたから、オレノグラフィティさんもすごすぎる。

  そしてななちゃん先生役、黒沢ともよさん。

  ななちゃん先生も、やばいやつではあるんですよね。どう考えても「マスコットみたいで」をポジティブに捉えていない若林先生に二度も言うところとか、そもそもやばい若林先生を好きになったりとか、教師というものに疑念を1mmも抱かない人。まあでも、《先生》というものの認識に関して、若林先生と実は相反するものがある人なんですよねきっと。若林先生の「いじめに悩みたい」にたいして、ななちゃん先生は「(いじめられている)生徒から相談されたい」なんですよ。信頼関係がどうのってずっと言ってるので。そして、若林先生を「(私と違って)マスコットみたいな」と表現している。自我がなく生徒に寄り添える関係が理想なんですね。あの、ずっと認めてもらいたかった父親が亡くなって情緒がおかしくなってるタイミングの若林先生に言ってしまってるのも完全に善性からの言葉で、ただ善意が盲目なために邪悪性を持ってしまってただけ。

  最終的に「ともよ……」しか言えなくなる、ともよフィーバータイムこと、カエルの子はクジラなのソング、本当に毎秒すさまじさで息が止まりそうでした。まああのファンサをいただけたんですけどそこじゃなくて、息継ぎなしで声色が劇的に変わるんですよ。パワフルでセクシーな歌い方から、「カエルの子〜はク〜ジラなの♩」だけとか、「僕はおたまじゃくしですらないの♩」の「おたまじゃくし」だけ、伊地崎麗奈さんのごとききゅるきゅるボイスになるんですよ。声優、どんな喉をしているんだ……。パープルと黒の、ゴスロリっていうかなんかめちゃくちゃパニエの入ったミニスカステージ衣装で、お似合いだしずっと可愛かったんですが、あの、なんか、まあ若林先生の夢の中という描写なので、あの、趣味なのかな……。エッチなティックトッカーは着ないと思いますが。

  そして鯨井さんのおたくはこれ、ほぼ出番のない用務員さんに対して怒ったりしなかったんでしょうか。この完全に面白かった舞台の、それだけが気になってる。カイジ帰りの用務員さん本当に出てこないんですよ、ご自分で舞台袖から撒き散らしたらしい大量の紙くずを幕間に掃除しに舞台上にきて、20分フルで体を張ってボケて、終わりがけに開始前アナウンス読んで(「ああ、演劇部のか!」「母音を立てるってやつ。まあ俺好きじゃないんだよな」よかったな)、フランス国旗持ってレミゼパロしにきてたけど、出番自体は全然なかったので。いやでもほんとこういう原作なしのところに突っ込むとつくづくスタイルのいい方。こんな凄い作品のプロデューサーで、そして(わたしは手嶋先輩のことが大好きだったので)2.5でもずたぼろに泣かせてくれて、でもって泣かせにきてるわけでもなくてただただ芝居に真っ直ぐで。応援しがいのあり過ぎる人だな。本当に楽しい現場納めをありがとうございました。

 

  2020年、エンターテイメントを生業にしている方々には、ほんとうに大変な年でしたね。もともと仕事のない小劇場推しメンはさらに仕事がなくなっていき、好きな劇団さんの本公演が無事に終わっただけで泣きそうに安心した年でした。一方で応援させていただいているアイドルの方は、いつもならいけない現場ばかりなのが配信が増えて拝見できるライブが増えたことなど、ありがたかったことも多かったです。

  行かなくて良い大義名分があったり、余らせた席にも払い戻しがあったり、そうかと言って行けない理由もあったりし、《貢献できるおたく》とはなにかいまいちど考えるような年になりました。ただ、生で観にいけた幸運と、見上げた変わらずきらめく板の上の景色だけは、きっと忘れずに、2021年も舞台というものを好きでいられたらいいなと思っています。

  ここまで読んでくださった方がいらしたら、ありがとうございました。