スケート靴を脱ぐまえに

舞台・スケート・他 備忘録ポエム >₍ᐢ. ̫ .ᐢ₎

2019年上半期おぼえがき②

 モリミュの感想が書きたくてはじめた上半期振り返り、無事続きました。

 

 

5月

 

──約束破ったら、ゆるさないんだから

舞台 Collar × Malice 

 @シアターサンモール

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 橘龍丸さんと松田岳さんと演出と照明が特によかった。しか言えることがないのが悲しい。

 脚本演出にそこそこ期待して入ったらわりと琴線に触れず、諸事情で大阪まで行った割にずっと虚無でした。

 ただ原作おたくの人とちょっと話したら原作おたく的にはすごく面白かったらしい。わたしもゲームのネタバレブログ読み漁って各ルート把握するとまあそこそこ楽しく見られるか〜とはなったので、脚本さんが原作おたくの満足いくようにと思いすぎてエピソードを削れなさすぎたのかなとは考えられます。それでも絶対もっとなんとか……なったよ…………一緒に行ってた人たちとは「ノーリミ観たくない?」「戰花でも可」「月下がいいです」となっていた。

 メンヘラヤンデレやらせたらめちゃくちゃに強い高崎翔太さん、さすがに約束を破って早朝?家を出るヒロインの背後から近づくやつが怖すぎてもはや笑顔になってしまった。

 演出に関してですが、サンモールでも結構試行錯誤して常に日進月歩だったし、そもそも肉声だったのもよかった。サンモールから大阪のIMPホールに変わってだいぶ横幅が広がったのとマイクがついたのとで、照明とアンサンブルの出入りを大幅に変えてたのは素直にすごいなと思いました。来年公演予定の続編は脚本演出の総とっかえとなりましたが、どうなるのでしょうか。

 そういえば千秋楽ダブルカーテンコールで、前楽ダブルカーテンコールでの高崎翔太さんと冨田翔さんの「じゃあ全員からご挨拶を…」「いやそれは楽でしょ!」との流れを汲んで全員ご挨拶かなって思ってたら、やっぱりバラしの関係でその時間が取れないってことになり、やや拍子抜けする場の空気を突き破るようにおもむろに高崎さんが「感謝の気持ちを伝えたいのはみんな一緒なので…どうしたらいいと思います?しゅーとくん!」と振り、鷲尾さんも普通に「そういう時は……踊ればいいと思います!」とか言い出してハ?ってなったんだけど、その華麗な入りから幻のOP(場当たり○日前にNGが出たためボツになったオープニングキャスパレ、サビでメインキャスト含めほぼ全員が踊る!)の流れになって叫んだのは楽しかったな。やたらダンスのうまい白石さんウケた。え!?どこから再現するの!?と誰も把握できずわたわたしていたアンサンブル、ヒロイン、中ボスさんも可愛かったです。

 キャストが天才といえば、中だるみしそうな時期から謎の日替わりっぽいやりとりを増やしてきた鷲尾さん橘さん松田さんがめちゃくちゃ面白かった。鷲尾さんのああいったバランス感覚には抜きんでるものがありますね。キャス変するけど。

 キャラクター身内一番人気は柳愛時さん、次点で白石さんでした。わたしはといえば、橘さんの笹塚くんの、常に上がっているうつくしい口角と、響く低音と、自分の体の一部のようにオーバーサイズのアウターをあまりに綺麗な円を描きながら羽織る仕草が好きでした。演技もめちゃくちゃよかったしドーナツ食べて親指を舐める仕草もかわい〜のに雄だった(言い方)。上手にしか住みたくない。終。

 

──共犯で同志で家族 僕たちはこうして生きていく

ミュージカル 憂国のモリアーティ

 @天王洲 銀河劇場

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 2019年観にきてよかった大賞、上半期にして受賞確実作品。山本一慶さんの歌うお仕事!!と意気込むもわたし自身スケが微妙だったため、最速先行で少しだけ揃えたチケットがちゃんとそこそこ良席で嬉しかったのもポイント高かったな。ありがとうSQ先行。初日から3日目くらいまでは常にリピチケを余裕販売していましたが、中盤にしてリピチケを売り切り、楽日は当日券が抽選になっていて本当に嬉しかった。とにかく質が良くて面白かったもんね、わたしも1枚しかチケット持ってなかったらどんな席でもいいから増やしてたと思います。もちろん近い席や見やすい席が好きだけど、この舞台は3階席から観ても見切れから観てもその価値がすこしも下がらないなと感じたので。

 もうとにかく歌が凄まじかった。正直直前の屋外イベントでのハモリがそこまでじゃなかったから舐めてかかってたんですが、銀河劇場のおかげかはたまたいつでもスケジュールぎちぎち売れっ子の皆さんの追い込みの本気か、鳥肌が立ちっぱなしでした。いま2.5界隈中堅〜若手の歌える枠でスケジュールが空いてた人がこちらでーす!という感じで、圧倒的に曲が難しいのにきちんと歌詞まで聞き取れて、舞台どこ見ても顔が綺麗、演技うまい、照明最高、もう、なに???

 とくに舞台美術がとても素晴らしかったと思います。さまざまに表情を変える窓が、ランプの明かりを透かすラストシーンまでよすぎた。

 劇中歌、個人的にはウィルルイスの悪い悪魔をやっつけろデュエット接触で一慶さんにはタイトルを訊きましたが、タイトルはあったけど忘れた!だそうです)と、劇中なんどもいろいろな組み合わせで歌われる『誓い』のモリアーティ3兄弟バージョンが好きでした。クロソマレぶりに聞いたらものすっっっごく歌が上手くなっていらっしゃったアルバートくぼひでさんの低音ハモりに、ルイス一慶さんのいつもの軽やかで安定感あるメロディがのっかって、そのまた上から高音の化け物魔術師鈴木勝吾さんのファルセット。天才の所業。

 しゅんりーさんとひらりょさんのアドリブ力(マイルドな表現)にも笑顔にされっぱなし(マイルドな表現)でした。あと七木奏音さま、キュートにコミカルで歌が上手くてお顔が綺麗で最高。

 壮絶なハモりに圧倒的な主旋律、生演奏ならではの美しくときにはお茶目なピアノとヴァイオリン、歌うように喋り語るように歌う圧巻のメインふたり、怒涛の展開、隅々まで質の高すぎるアンサンブルの皆さん、先述した夢のような照明。リピチケ列が毎回すごくて、金曜日でもない平日夜に3階席まで埋まってて、売れ行きの好調さから土日は見切れと立ち見が解放されるとアナウンスがかかり、千穐楽にしてとうとう当日券が抽選になり、と「金と手間がかけられてる面白くて質が高い舞台が埋まっていく」さまをまざまざと見せつけられた最高の公演期間でした。ほんとにすごいものを観せてもらったな……。

 余談ですが、フレッド役赤澤くんの歌がモラン大佐役いざーさんとデュエットなことが多かったのに歌い負けてなくて失礼を承知でびっくり。あんなに歌がうまかったんですね。某イベントで、上ハモですよね?ということを確認するついでに伝えたら「あっはは!そうなんだよね!意外とね!!意外と!!!!!」とオモロ返答をもらいました。失礼でごめん。

 ひさびさにマーベラスの本気を見せられた感。再演でも新作続編でもいいけど、まだかなー!!!!!!!

 

──忘れかけていた優しさを思い出せたのは きっと君が僕に 居場所をくれたから

イブステ ep1 -副題長すぎるので割愛-

 @草月ホール

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 仕事が終わらなさすぎたため、駆けつけたのが開演してからかなり経っててめちゃくちゃ遅かったのと、目当てが俳優さんとしても出てたバックダンサーさんだったのと、原作を全然把握しておりませんで、ナンカタノシカッタ!という記憶しかない。でもこれはおなじ脚本の人が書いた作品をいくつか観たわたしにしてはたいへん珍しい感想なので、この人はずっとこういう系統を書いていたほうがいいのではないかと無粋なことを考えてしまいました。ただダンスパートで脳溶けてただけかな。いやでもツキステ初演とか脚本そのものは地獄だったから進化したか慣れたかどっちかかもしれません。席の近さに初演を思い出したから余計になのかな。

 経歴のあまりにも違う俳優さんたちが、ここでひとつのグループとなり、真摯にまっすぐキャラクターに寄り添おうとしているのがひしひしと伝わる公演だったように思います。こんなに、みんないい子やんけ!で終わることもそうないと思う。しばらくはきっと同じグループとしてアイドルの人生を歩むこの4人のみなさんがどういった関係をどのようにすすめて歩んでいくのかがとっても楽しみになった。まさか店長と夏の夜の夢ぶりの再会がここになるとはって感じですよ。

 ライブパートはとにかくメンバーカラーが難しくて詰んだ記憶。キンブレ死ぬほど持ってるので公式(4色しかなくて輝度が低い)を買わなかったわたしが悪いのですが、メンバーカラー青緑(!?!!?)の人のペンライトカラーtwitter上で「青緑って何色!?なんで青緑!?」と訊いたところ、「孤高の光なので」「キンブレ自体はうっすい紫」と別々のフォロワーさんから返ってきてしんだ。なんでだよ。会場では水色や白なども観測できました。あとこの事務所、懲りずに死ぬほどピンクがいるのですが、このグループの子のピンクもやはりというべきか、既存キャラクターのどのピンクとも、キンブレデフォルトの2色とも違うという結果で、これが噂のらぶへすか〜!となっていました。結局面倒になり常に連れの推しのカラーと矢印うちわ、たまにダンサーのうちわを持つという結果に。楽しかったけど。プラネタリアという楽曲が連れもわたしもとにかく楽しくて脳が溶けました。キラキラピカピカにハピネス!!あとはリレイズがどうやら好きです。脳みそに残り続けるサビ……。

 懲りずにep2も検討しているのですが、みなさんのその後を見つめられるし、できるだけ楽しめるといいなとは思っています。

 

──新しい季節に今 名前をつけるなら君がいい

MANKAI STAGE 『A3!』春単独公演

 @天王洲 銀河劇場

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 水野に勝てねえ2019

 これはシンプルに自慢ですが、これまで夏単含めおともだちへの協力枠全て当ててきたため、成功報酬として割と満足いく席で初のえーすてを連番させてもらってきました。客席とばちばちに目が合う天才のシトロンさんの、びっしりそろったまつげのまたたきがとにかく印象に残ってる。春組さんテーマ曲『一五一会』「春一番にキュッと目を閉じた/君の手をエスコートするよ」で他のキャストさんが歌詞通り目を瞑る中、ひとりだけエメラルドの瞳がきらめいていたのが忘れられません。他の人も目開けてたらそれはごめん。自慢終わり。

 最近あまり正統派人気舞台というものに触れていなかったため、正しくお金をかけられたオタクハッピーコンテンツを摂取できて大満足。メインキャスト9割が一度は見たことのある、今をときめく俳優で覚えやすいとはいえ、原作のミリしらが埋められなくて諦めた女でも無理なくキャラクターを把握できました。あれは脚本に乾杯で、すごい技術だと思います。

   この舞台と前後するようにとにかくアンサンブルの多い舞台作品を見ていたからかもしれませんが、まあ清々しいほどにアンサンブルという存在がいない。これは、アンサンブル自体が作品展開として別に不要だからではない、というのもすごいところ。例えをだすなら、このシリーズのもっとも特徴的な構成と言える、物語の核を握る劇中劇に顕著にあらわれている。あのシーン、例えばアリスのトランプの衛兵たちも、ぜんまい仕掛けの政府側の兵士たちも、至さんvs真澄くんのゲーム画面も、わざわざまた別のヘアメイクをして衣装を変えて稽古期間を費やしてまで、人気キャストのみなさんが担っているのが新鮮すぎてびっくりした。出演シーンが増えておたくも楽しいしwin-winだと思う。

 こういった印象的なシーンもすきな演出もたくさんあったし、とにかく歌って踊ってくれるのもちょう速い曲を踊らされるのも楽しいし、観に来たおたくがそのまま劇場観客役を担わせてもらえる多幸感とか、天才の皆さんによる日替わりとか(玲さんについていく水江くん大変器用な人ですね)、通路角席が水野くんのために全公演空けてあるのとか、いろいろと書きたいことだらけ。でも、特筆すべきはやはりふるやまとさんの凄まじさに尽きます。

  劇中劇2幕に当たるゼンマイ、筋自体はなんてことないセオリー通りのSF文脈で進んでゆくのですが、ふるやまとさん演じるシトロンくんの憑依型の演技力があまりにもつよすぎて、劇中劇そのものの説得力としてこちらに訴えかけてくる。人造人間としてのわりかし常軌を逸した動きもさることながら、シトロンという俳優の持つ魅力をセリフの発語とまぶたと口角であんなにも効果的に演じることのできるひと、きっとこの先もなかなか見つからないだろうな。

 今回前後半合わせてどちらでもお当番じゃなかった横田咲也くん、接触イベントに無銭で参加したときは顔が小さすぎて人間として大丈夫なのか?と思ってたんですけど、春組に投入されたとたんふつうに見えて焦りました。春組、完全に頭身が整っててわりと化け物揃い。身内におたくがいるのでわたしごときが別に褒めなくてもいいんでしょうけど、ご本人が「俺なんにもできなくって」というキャラなのに、しれっとダンスもうまいし衒いもなくネコチャンをやり遂げるし歌も下手くそじゃないし、求めてるところが高い人なのかな。まあ春組、周りが特技特化型SSR!って印象を受けるので、そこに関してはちょっとコンプレックスとして根付いてるのかもしれないですが、基本的に日替わりもできるし推しだったら営業ツイートをできないところがむしろよくね?くらいなんですけど。目とくちの可動域がひろいので、表情がとにかく豊かでよかった。素で可愛い!って思わせられるのは絶対咲也くんとしてつよみだと思う。

 実は、前前前世くらいで右にしか曲がれなかった頃*1 に大変思い入れがあったため、前川くんのことを友だちの推しことよこたくんの次に楽しみにしていました。今公演のお当番キャラクターであるということを全く知らなかったので、常にまっすぐ脚本にも劇団にもシトロンくんにも向き合う皆木綴くんを拝見できてとっても嬉しかった。相変わらず脚が長くてお顔がちっちゃくて、くしゃっとわらう表情が素敵でした。「♪ワキワキ~な笑~顔~」の下がる目じりとめちゃくちゃに可愛いお口が忘れられなません。通路角席全通の水野くんに勝てない。

 エーステ、春夏は友人の円盤で見せてもらったことがありますが、ひとつひとつ完成度が高くてまとまっておりブレずに質が良いため、秋もできることならば稲垣・脚が5m・成弥さんを見上げに一度くらい因縁のステラボールに戻ってもいいかなという気がしています。

 余談ですが、ゼンマイの軍人役真澄くん姿のまきちゃんさんのことをロイマスタングと呼んでおり、トレーディングエリアの皆様におかれましてはその節は大変失礼致しました。

 

 

6月

高度ブルー

 @ウッディシアター中目黒

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 小劇場でいまこんだけ書いて全部外れない脚本家をなかなか知らないのですが、その方の主催する劇団の本公演で、もう一度みたいなと思っていたこの劇団の女優さんも出るし、主演は顔のいい歩く運動神経こと我が軍一条館の絶対エースお姫様こと村田恒さんも出るということで都合つけて強引に滑り込みました。

 結論から言うと、やっぱり面白くて、一度だけでも入れてよかった!

 お目当の女の子は島の自警団を自称するキャプテン・アメリカみたいな服着たやばいやつでしたけど、やばいやつにはやばいやつになった根拠と過去が必ず用意されていて「そういうキャラ」で絶対終わらせないこの安心感。バックボーンがちゃんとしてる。やばいのに。

 村田くんは相変わらずめっっっちゃくちゃに演技が巧いですね。いつどんな役を見てもぜんっぜんちがう人で、未だにご本人どんな人なのかよくわからない。といっても直近で観たのプリステか止まれない12人でした、大昔だ……

 脚本、円盤にならないからってまあタイトル通り某救急救命ヘリドラマをもの凄い勢いよくパロってくるし真ヒロインの妹役(死んでるので回想にしか出てこない)には日替わりキャスト持ってくるし、なんか壮大な回想シーンで全キャストにマイケルジャクソンほぼフル尺躍らせるし、まじで、なに????????????あっ伏線回収された、あっ終わった……といういつも通りあっというまの体感時間でした。

 最近とみに思うのですが、小劇場作品、真っ当に褒めるのが難しいなって。これはお友達と話したんですけど。

 正直、コメディには「元気になれました!」シリアスには「考えさせられました」という褒め言葉を使っておけば、ひとつの作品としてどうなの?役者のおかげで日替わり面白いけど脚本つまらなくない?意味深なラストにしとけばいいってもんじゃなくない?……みたいな舞台も褒めることはできると思うんですよ。この上半期の後そういう虚無小劇場に連続で当たってしまって感情が無だったのでただの愚痴と八つ当たりですが。でもそうじゃなくって本当に笑いがとまらなかったりホロリとしかけたり、演出が豪奢かつ緻密な伏線が回収される作品もある。これとか次とか。

 とにかく筆が早い脚本さんですが、扱い特典でいただいた稽古日記ではオールアップがオッまじか〜というくらい遅くて、でも多分小劇場界隈このくらいが普通のようだったので(稽古機関の中盤まではまずもって前半までしか上がっていない)皆木綴さんはもっと自信もっていい。

 村田くんのYシャツスラックスの男子高校生制服姿が観られたのも二億点でした。かっこよ。日替わりキャストにサイコな笑顔で無茶振りしてたけど。

 

モナルコマキ ‐ 石川五右衛門異譚 ‐ 

 @シアターグリーン BIG TREE THEATER

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 とにかく大好きな劇場なので思いがけず行けてよかった!

 始まるまでは、小規模~中規模劇場にしてはキャスト多すぎない?と思っていたのですが、なるほど衣装もメイクも凝ってて多分これは早替えが大変難しい。歴史的登場人物が多く、展開も史実のように進んでいくので、サブメインが何役もやると結構混乱するかも知れないですね。アンサンブル以外でふた役やる人が何人かいらっしゃいましたが、前半の役を好きになったあたりで死ぬという退場を経ての別役だったため、一瞬だけ生き残ってくれたのかと淡い期待を抱いてしまいました。顔の似てる別人でしたけど(死んだ恋人によく似たひとと出会っちゃった気分なんだけど……と盛り上がったな)

 モナルコマキ(Monarchomaque)とは、暴君放伐ともいい、暴君は抵抗されてしかるべきだとする、中世的な抵抗権の一つだそう*2。この作品の大筋の物語じたいは豊臣秀吉(恰幅よく、着物もきんきらきんの絵にかいたような悪役ビジュアルで良かった)に故郷を燃やされた石川兄弟による復讐劇なので、当初はそれを指すとおもっていました。

 ただ、ラストまで見てからチケットを増やしてもう一度見て、抵抗される対象は主人公の五右衛門を指すのだろうと思いました。多くの人を巻き込み、協力してくれる人物を自らのミスなどで次々と死に追いやり、自分を慕う少女も彼女に思いを寄せる実兄も顧みず、恋した天女の(彼の考える)幸せと復讐にだけまい進する五右衛門は、兄からしたらまごうかたなき暴君であったはずです。いやまじで久々にこんなピーチ姫主人公と出会ってしまった感。ピーチ姫の方がじっとしてるだけまし。大声出さないし。

 そもそもなんでチケットを取っていたかというと、推してる劇団の子がふた役キャストとして出ていた(とにかく殺陣がかっっっっっっっこよくて重みが合って震えました、五右衛門のせいで2度も死ぬけど)のと、1年前位に出会っていた中村裕香里さんが正ヒロイン細川ガラシャさまとして出ていたのと、またもや村田恒くんが出ていたからです。村田くん、急に連戦。あと終演後にチェキがあった。

 ガラシャさま、中盤までは本名の「たま」として出ているのですが、もう登場からぶっちぎり天女。一目見ただけで美しいのに喋ってもお声が可愛くて所作が綺麗で、ラベンダーの打掛があまりにも似合っていてそのまま溶けて消えそうでした。そりゃ細川忠興も幽閉ヤンデレDVスレスレ旦那になっちゃう。やり方が正しい人というわけではないけれど、それでもぽっと出のわけわからん男(五右衛門)に最愛の妻を奪われかけるのシンプルにかわいそう。

 村田くんは前後半でまったく別の役をやっていて、前半の少し粗野で素朴で声が大きくてはつらつとしてて異様な身体能力の忍もよかったけれど、後半の冷静沈着なガラシャさまの側近、小笠原秀清さまがとにかくよかった。めちゃくちゃ美しいお着物にお顔にサラ艶ストレートポニーテール(ポニーテール?)でビジュアルも百点満点ながら、楚々とした立ち居振る舞いにどう見ても強い殺陣、最後に束の間二人を逃がしてしまうところも、五右衛門の最期に泣きながら(史実ではガラシャが死ぬときに詠んだ)辞世の句を口にするガラシャのほうを登場人物の中で唯一すこしだけ振り返る演技も、なにもかもすてきでした。この演出は、きっと小笠原秀清が、後々忠興不在の城を攻められて自決を決意したガラシャ介錯する(ガラシャキリスト教に改宗しており自害できないため)立場にあるからだと思います。ますんさんこと増田裕生さんの忠興、裕香里ちゃんのガラシャ、村田くんの秀清という細川軍圧倒的顔ラン采配、最高。

 で、この舞台でわたしが一番心打たれたのは劇伴音楽でした。あまりにも予想外かつドンピシャで。

 曲名を覚える・思い出すことがとにかく苦手なのにフィギュアスケートのおたくもやっていたわたしにもわかった、リベルタンゴ革命のエチュード革命と激アツ王道曲ばかり。こんな風にクラシック曲を使ってなお音楽が浮いたりしない構成力にも目を見張りました。よりドラマチックに、荘厳に、胸に迫ってきてよすぎた。曲名間違ってたらすみません。

 物販チェキもとにかくハッピーで言うことない。上半期の締めとして優秀でした。本当に楽しかったです。

 

 前回の反省をふまえて1万字超えないよう気をつけたところ、かなり味気なくなってしまいました。全然中身やキャストに触れられていない。要精進ですね。

 もう2019年も残すところひと月とすこしというこの時期に更新すべきではないのですが、供養の感覚で完成させてアップロードしておこうと思います。下半期は本物の虚無と出会い続けた月があるので更新ありません。メサイア黎明乃刻、Run for Your Wife、ミュージカルハムレットはすごくすごくすごくよかった。

 これからも好きなところにふらっと行って楽し〜!って帰ってくるくらいでいたいなと感じました。もし読んでくださった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございました。

 

 

*1:GEKIIKE本公演『漆黒ノ戰花』(2018年1月上演)

*2: Wikipedia [モナルコマキ] - https://t.co/Z84FHqXma9?amp=1