スケート靴を脱ぐまえに

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恐るべき子どもたち感想

恐るべき子どもたち(150626夜/150627楽)

出演:山本一慶、黒羽麻璃央大久保聡美、倉本発、山本紗也加(敬称略)
公演期間は6月26日~6月28日、全4公演ととても短かったのですが、半年ぶりの一慶さんの歌唱ということで二度観てきました。原作はフランスの詩人ジャン・コクトーによる同名(邦題では「子供たち」)小説。うっかり原作を読まずに行ったため、ポンコツ頭には大変難解でした。
 
 

■ぽつぽつと覚え書き ※シーンは多少前後しています

 

-第1幕-

▷暗転の前にまず音楽が流れて、すーっと客席が真っ暗になってからスポットライトが思いがけず近くに落ちて、それを浴びる発くんが立ってた。舞台下手のすぐしたの通路。前口上?プロローグ?を語るんだけどその近さにびっくりして、目を眇めて片頬でニヒルに微笑みながらの語り口に息止まりそうになった。ここまでまだ2分も経ってないんですよね、発くんて調べたら朝ドラでちょっと見たことあったけどこんなに素敵な人だったのか…!

▷かっこよかった〜!と言うだけでなにも気にせずにいたけど、あの冒頭の発くんは誰だったのだろう?コクトーとか医者とか、最後に出てくる死神のような黒子なのかとか、選択肢だけはかなりあったんですけど、あの事件を経てひとり大人になったジェラールという可能性もあるのではって急に思ってしまった…いやそもそもジェラール役はまりおさんだけど。

▷あとこれは複数公演を観に行けたことに感謝した主な理由のうちの一つですが、この発くんの語り、この舞台が全て終わった後に聞くとすごく腑に落ちて、これは誰のことでこれは誰のことって思えたのがすごーくよかったです(記憶力がなさすぎて一回目見終えてからは思い出せなかった) とってもいい文章だったのに全然思い出せない…二週間も続くわけがないこの無秩序が、しか思い出せない…嵐に例えるくだりとかすごーく好きだったんですけど。

▷幕が上がってすぐの雪合戦をしている子どもたちの声の録音にはたぶん男子3人とも参加していたんだろうと思うんですが、その無邪気なわあわあって声と全く違うから、やっぱりポールもジェラールも、最初ですらどこにでもいる普通の男の子ではなかったのかなと思いました。

▷やまもとポールは第一声「ダルジュロスを見なかった?」で運命の歯車を狂わせていくわけだけれど、もはやそこから既にあやうさをしのばせている気がしました。 ▷「ダルジュロスなら広場だよ」「広場は危険だよ、ポール…ダルジュロスは危険だよ…!」ジェラールのこの「…!」、後に脳内で鳴り響くことになりました。台詞はうろ覚え。

▷ダルジュロス聡美ちゃんの登場で急に世界が萩尾望都先生作画になったかと思った、小さい顔に瞳がきらきらしていて唇も赤くて、あのコート?マント?と帽子とかっちりしたボトムと全てがギムナジウムの一筋縄でいかない美少年を演出していました。 ▷自分をを見つけたポールに向かってダルジュロスは石を入れた雪玉を、♪ジャ、ジャーーン!(ほとんどダーンだったかも?)っていう暴力的なピアノの音と共に投げつけるんだけど、それが美しくてたまらない。セーラームーンの変身かってくらいのフォームでくるりと回って、コートがフワッと円になって、ダーーン!で細い腕が振り下ろされるの素敵すぎた…!

▷先生役の発くんのほうを一切見ないで答えた「はい、先生」の時の唇のゆがめかたが最高でした。口角を上げていたわけではないんだけど、皮肉げな笑みにも見えて、なんだったんだろう…!瞳がずーっとギラギラしていた…!! ▷もう行っていい、って言われたダルジュロスはコートの右側を右肩にかけ、ピシッと敬礼をしてくちびるだけで笑い、踵を返しつつコートをぶわっと戻してはけるんだけど、コートの中のセーターとか色々含めて罪深かったなと…ダルジュロスに全部持っていかれるシーンでした。 ▷敬礼、一回目のときはダルジュロスちゃんをガン見していたんですが二回目に見た時は遠目の席だったのでポールの方にオペグラ固定して見ました。…のですが、陶酔の表情がものすごかった。敬礼して一度止まるあたりでふわっと感極まったように笑う顔めちゃくちゃきれいでめちゃくちゃこわかった。あの時点でもうダルジュロスの真似して毒薬を探して集めてるけど、狂気に片足浸しながら生きてたんだなと。

▷タクシーのシーンは「車で送った」というジェラールのセリフでようやく、ああさっきの車の中か!って気づきました。原作を読むべきすぎた… ▷まりおジェラールがポールの右手側に寄り添って座るんだけど、意識が朦朧としているやまもとポールの手を左手でとって右手で包み込む。ポールは目を開けないで肩にもたれたまま。

▷「ポールの手の熱が伝わってくる」「熱い、熱があるんだ」「ポール、僕たちはもう地上にはいないよ…」「ポールはダルジュロスが好きなんだ」…この台詞のエモさ…!いやエモいって言葉安易に使わないようにしよ〜とか思った頃もありました。でもエモいんだよ、まりおさんの喋り方が。あれにはやっぱり菊丸英二を経る必要がどこかにあったのだとおもうんです…よかった……

▷この頃のジェラールってエリザベートにはまだ恋していないように見えるけど、ポールのダルジュロスに心酔している行動が好きという感情に基づいていることにはちゃんと気づいているから、結構年相応に成長してきているんだと思いました。原作では最初から好きなのかもしれませんが、あくまで舞台のまりおジェラールを見る限りではという。

▷それから、ポールの手が冷たかったら包んで温めるのもわかるんだけど、熱いのになんで両手で包んだんだろう!片手ではもう夢幻に行けなかったからなのか、エリザベートに恋する前のジェラールにとって恋に一番近いところにいたのがポールだったからなのか(ここまで考えてこれ単にジェラールの手が冷たくてそれで冷やしたかったのでは?という)

▷夢幻に「出掛ける」ことを劇中で最初に言及するまりおジェラールが、誰よりも先に地上に降りてしまうことを考えると、ジェラールはこの舞台においてなにかのはじまりの場所すべてにいるんだけど(ダルジュロスの居場所を教えておきながら、ダルジュロスは危険だよと何かを示唆する台詞で悲劇が幕を開けるし屋敷にポールを連れてくる)、終わりにはいられないんですよね。終わりの引き金を引くのに、舞台が終わるところにはいられない。

▷このシーンの雪が降っている照明がすごくよかったんだけど、この舞台って天気が良さそうなシーンが海しかなかった気がして、パリの気候のせいなのかな…って思いました。勝手なイメージですけど。曇りと雨と雪!寒そう! ▷エリザベート紗也加ちゃんめちゃかわいいんだけど、紗也加ちゃんの演技そのものが微妙にアスカラングレーな喋り方で、アスカラングレー苦手勢としてはかなり…いや芝居だから仕方ないけど…!と悶々としてしまいました。あれっということはやまもとポールはもしや碇シンジ…?(世迷言)まあでも私が単に「子どもっぽい喋り方での狂気」が見たかっただけかもしれないなあと。

▷気分屋だけど頼れるお姉さん、無邪気すぎる子ども、狂気で死に至る女、全部振り切っていくの凄まじかった!

▷さて、病気のママとして揺り椅子に座って再登場するさとみちゃん、あの短い時間だし、ダルジュロスとメイクは変えてないと思うのに凄まじく別人で最高でした。あの屋敷の中で物静かでひとり異様なんだよ…!あのうるさいきょうだいの声が聞こえていないんだよ…

▷医者を呼んだ後「こう心配事が多くては夢幻郷にいけない」という主旨のエリザベートの発言があるんだけど、あれを聞いたかぎりではあのままポールをおいて大人になるのかと思った(違いました)

▷もしかして、あの「ポールは死にかけている」時期を体験したからこそエリザベートはああいう方向に行ってしまったんでしょうか。良くも悪くも互いが半身を担っていたのかなあ…

▷余談ですけどエリザベートに脱がせてもらいカウチに寝転ぶやまもとポールのシーン、とにかく退廃的で耽美的でどきりとしました。エリザベートがいい姉だということなんだろうけど。ただ子供部屋とは言えもう第二次性徴も迫っている男の子女の子が同じ部屋って、それも男女が寝室を分けることがかなりスタンダードな西洋社会では不思議なことのように思いました。勘違いだったらすみません

▷急に知っているイントロが流れてびっくりしたのは「さくらんぼの実る頃」! ここにきて、劇中BGMってもしかしてほぼ全部有名な曲なのでは?とやっと気づく。しかもさくらんぼの実る頃、エリザベートが歌ってくれてびっくりしました!私が知っていた唯一の邦訳とはちょっと違った気がしたんですけど、歌詞がすっと入ってきて震えた。紗也加ちゃんめちゃくちゃお歌がうまい…!

▷そして勝手にイタリアの歌だと思っていたせいで余計にびっくりしたんだけど、これは絶対に紅の豚ジーナのせいですね。ピアノに手をついて歌う加藤登紀子さんの歌声がかっこよくて、イイ女で、そのイメージばっかりありました。ジーナ、幸せになってほしい(ちがう)。調べたらちゃんとフランスシャンソンの代表曲でした。原詩もフランス語。

▷高い声の女の人が歌うとこんな感じになるんだ!ととにかく感動しました。

▷もう学校に行ってはいけない旨をエリザベートから伝えられたやまもとポールがショックを受けて、隣にいてほしいとエリザベート紗也加ちゃんに寄り添ってもらうシーン、まりおジェラールがポールに寄り添うタクシーのシーンとほとんど一緒の構図で驚愕…!たまたまじゃなくて演出だったと今でも思ってるんですけど、ここのシーンのどっちもポールは夢幻郷に行っていないんですよね。特にエリザベートとのシーンはエリザベートにいざなわれるにもかかわらず。そしてどちらのシーンも行けない原因はダルジュロスにあって、ダルジュロスに対するポールの想いにある。

▷ところでこの後か前かでダルジュロスの写真を宝物の抽斗に入れるんですけど、机?の上にあった写真のようなもの、オペグラで見たらほんとうに白黒でダルジュロス1人の写真と、ポールジェラールとのスリーショットが印刷されていました。何が言いたいかというと、じゃあなんでダルジュロス聡美ちゃんの生写真はなかったんだ…!ほしかった…ってことです。

▷あとこのシーンを境に結構頻繁にエリザベート紗也加ちゃんが脱いで躊躇なくスリップ姿になるんですけどどきどきしました。細い…!

▷ポマードを塗るエリザベートに見とれるジェラールの恋する表情はとても良かったです。あの前になにかあったのでしょうか、まりおジェラールがいつエリザベート紗也加ちゃんに恋をしたのか、それがとても気になったのですが、確証を得ることができませんでした。ご覧になられた方がおられたらすごくききたい…!やはり最初からだったのでしょうか。

▷一部で初めて出てくる見所のひとつにやまもとポールによる暗黒舞踊?マイム?コンテンポラリーダンス?があると思うんですが、とても的確に夢遊病を演出していたなあと思いました。原作を読まずに臨んだ身でも、彼は夢遊病なのかもしれないと気づくことができた(実際読んだ人に確認したら夢遊病だったというだけですが)。多分夢遊病だろうなあ、もしくは、これは夢遊病かもしれない、というレベルだとしても、そうわからせるということは演出の最大の仕事だと勝手に信じてるので、あれを入れた菅原さんや振付のKAZOOさんの手腕は凄まじいんだろうなと。ただ奇抜な照明のなかを歩かせるだけでもいいところであえて踊らせるんですよね〜こわすぎる… ダンスとしてうまいのか、あの謎の感じは振付なのか一慶さんのスキルの問題なのかどうかすらわからなかったからなんかもういいんですけど、表情は間違いなく素晴らしかったです。あれが無か。凄まじい。遠くでもないどこかを見つめる瞳が虚ろすぎて、恐怖を覚えました。山本一慶、どこまでいくつもりなんだろう…!千秋楽では美人3割増しだったので凄みも増し増しでした(色眼鏡)

▷海の別荘での休暇のシーンでは、既に恋を自覚していたまりおジェラールに対してエリザベート・ポールきょうだいとの差がよく描かれていたように思いました。あのエピソード必要だったのかなって言ったらあれのおかげでポールが回復してその後のシーンは元気に動いてたんだよと教えてもらいました。思えばその通りだった。

▷あの3人並んでのコミカルなダンスはダントツでまりおジェラールが上手だったとおもいます!かわいい!手足の長さが存分に生かされていた!エリザベート紗也加ちゃんもやまもとポールもとにかく笑顔ですてきでした。万引きのエピソードについては、ジェラールは大人への階段をもう登り始めていたけどきょうだいの勢いに頭が上がらないという点から加わっていたのかなと。あと多分まだ大人になりたくないという気持ちもどこかにあったでしょうし。

▷アガート聡美ちゃん(可愛さの結晶)との初対面はとにかくまりおジェラールの表情の変化が印象的すぎました。社会に出たエリザベート紗也加ちゃんを楽しそうに見る顔から一転、驚愕、そしてこれはまずいぞというような危惧の表情への移ろい、すてきだった!

▷ジェラールはダルジュロスの亡霊からやっとポールを守ったと思っていたのに、ダルジュロスと同じ顔の女の子がでてきたことで大きな動揺を覚えたのだとおもいました。彼はこれ以上ポールが「ダルジュロス的な何か」と近づくのは今度こそ危険だと本能的にわかっていたということなのでしょうか。

▷アガートを紹介されたときのポールの表情は驚きから歓喜で、そこがジェラールと対照的でした。確かに感じたよろこびを言葉にもしているのに、恋に結びつかないのは、そういった情操教育を受けてこなかったからということなのかな…

エリザベートからアガートへ、この屋敷での同居生活を提案されたときの表情、ものすごーーーく嬉しそうなくしゃっとした笑顔でした。それが恋だよ!!!別媒体のこと引き合いに出すのよくないけど、♪俺はテンション下げることなく試合に挑める〜のところのえーじの声聞いてる顔してました。そうとしか表現できない…

▷第1幕最後、僕がいまでも思い出すのは、というジェラールのくだり、もう大人に入りかけているのだと感じました。叶わなさそうな恋を知って、叶わないままきょうだいに関わり続けたことが彼を大人にしたのかもしれないなあと。おじさんと同じ道に進むことで、振り向いてもらえないまでもエリザベートに頼りにされることはできると踏んだということでしょうか。

▷ここでポールもアガートへの恋に気づけていたなら夢幻郷に歩みをすすめなくてすんだのかなあと叶わないもしもを考えてしまいました… ポールの鈍さすごく謎なんですけど、逆にどうしてジェラールはスッと恋を自覚できたんでしょうね!やっぱり情操教育の差かな…

 

▷そんなことを考えているうちに幕がおりました。しばらく音楽が鳴っていたので、拍手をいつしたらいいのかだいぶ戸惑いました。 ----------- 思っていたよりも感想が長くなりそうなので、一度ここで公開しました。第二幕とつらつら考えたことについては、備忘録としてまた更新したいです。